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ライブコマースが日本で浸透しなかった4つの明確な理由

中国で大流行したライブコマース。「2017年はライブコマース元年」と騒がれ、次世代のEコマースの担う、革新的なサービス形態として注目されていましたが、期待されていた盛り上がりは残念ながら今の所見受けられていません。

それどころか撤退する企業があとを絶たず、東大生でFlatt社CEO井手康貴氏が手がけたインフルエンサーを活用した「PinQul」や、ディー・エヌ・エー社のハンドメイド作家のライブコマース プラットフォーム「Laffy」、さらには「メルカリチャンネル」も今年に入って撤退という形をとっています。

弊社の兄弟会社(neby inc.)はライブ配信の制作を事業としていますが、当然そこではライブコマースの制作もありました。上に挙げたようなアプリサービスだけではなく、動画サーバーとタグ設置によるブラウザ版ライブコマースのシステムを販売する会社もいくつかありましたが、順次撤退していっているようです。

そもそもライブコマースってなに

ライブコマースとは、一言で言えばインターネット通販番組のことです。インターネットのライブ配信を用いて、その中で商品を紹介し、購入決済機能をつけることでその場で商品を買うことができる仕組みのサービスです。

中国では4年ほど前からあるサービスで、KOLと呼ばれるインフルエンサーを活用し、ライブコマースで莫大な売上を作る人が出ることなどから、日本でも注目され輸入されてきたサービスです。中国では年間に1億元を超える売上をだす配信者が、2018年の時点で80人以上いると言われています。

一般的なECサイトのように、写真と文章だけで構成されるWEBページとは異なり、ライブコマースの場合は配信者とコミュニケーションを取ることが可能で、一方通行ではない双方向性がこれまでのEコマースの欠点を補うものであると期待されていました。

それだけ聞けば確かになるほどというようなサービスですが、なぜライブコマースは流行らなかったのでしょうか。

理由1:日本において品質は高度にコモディティ化している

まず中国のEコマース市場ですが、偽物が出回り、写真だけでは商品の品質の判別がつかないという点で大きな課題を抱えていました。これが中国でライブコマースが普及した理由のひとつです。中国ライブコマースにおいてはKOLの販売実績が大きく話題になりますが、実際のところ、一般のバイヤーによる配信でも圧倒的に売上を上げているケースが多くあります。それは、品質が定まらない中国のEコマース市場において、信頼できるバイヤーのライブコマースは「モノを買う」という行為においてユーザーの安心感に大きく作用していました。

一方日本の場合、品質は世界的にも高度であり、またそのことがコモディティ化されているため、Eコマースで偽物をつかまされる、写真と大きく異なる商品であるということは滅多にありません(たまには有りますが)。その感覚の違いが、そもそもの市場における消費者思考の違いであったと考えられます。

理由2:マーケットサイズがそもそも違いすぎた

中国のインターネット利用者数は2018年時点で8億人を超えています。一方の日本は1億人程度です。中国ではライブコマースの利用人口だけでも2億~3億人、流通額は5000億円以上と言われており、マーケットサイズが圧倒的に違います。単純に中国との換算値で言えば日本のライブコマースの市場規模はそれなりに有りますが、そもそも1つ目の理由などからライブコマースであることの需要は望めなかったといえます。

理由3:インターネット通販番組ではなかった

ライブコマースは「インターネット通販番組」と銘打っていました。ライブコマースではインフルエンサーを活用し商品を買わせる人間主体のサービス展開を行なっていましたが、そもそも既存のTV通販番組などは基本的には製品品質と行動心理学による販促マーケティングを行う事業であり主体が人ではありません。ジャパネット高田社長はある意味インフルエンサーかもしれませんが、それはTV通販番組をやっていたことで有名になったので順番が違います。先に述べたように中国においては「信頼できる人から買う」が価値を持っていましたが、日本では購入判断において相対的に「人」のプライオリティが高いとはいえません。その前提があれば、今までのテレビ通販番組と同じ路線の方が可能性があったかもしれませんでしたが、インフルエンサーマーケティングに頼ってしまっていたため、通販番組としてのコンテンツ作りができていなかったように思います。

理由4:独自プラットフォームである必要性はなかった

中国とはEコマースの背景が異なるという話をしました。日本においてはインフルエンサー(信用できる人)から買う、という事自体が強い購入インセンティブとはなりませんでした。そうであれば、通常Eコマースと同様に大きめのトラフィックに商材を落とす(amazonや楽天に出品と同じですね)ようにして、購買導線の障壁はなるべく取り払ってしまった方が良いかと考えられます。TV通販がまさにそうですが、TVという受動型メディアを用いて、莫大なトラフィックが集まっているところにコンテンツを投下する、つまり、「TVを見てるだけの買う気がない人」に「買わせる動機を持たせる」ことが必要です。
ライブコマースのプレイヤーは皆、独自プラットフォームを用いて、インフルエンサーなどマーケティングコストを投下し、まず集客をするというところからはじめていましたが、先にも述べたようにマーケットの性質が異なるため、そもそもの出発点が違ったのではと考えます。
本来であれば、トラフィックの集まっているところに行動心理学を用いて、買わせる為の戦略を練る方が良かったところを、購買インセンティブにならない「人」による集客に力を注いで、インフルエンサーが紹介すれば買うだろうというプル型のマーケティングを行なったことがうまくいっていない原因ではないかと考えます。当初、ブラウザではなくアプリだったことも悪手でした。

日本におけるライブコマースはどうするべきだったのか

なるべく多くのリーチが稼げるトラフィック環境がある中で、行動心理学的アプローチを行う方が可能性はあるのではと思います。例えばTVショッピング大手と共同でコンテンツ開発を行い、トラフィックを稼ぐ為SNS等分散型メディアを形成、ランディングはブラウザにして離脱を最小化するようにすれば、まさにインターネット通販番組で、日本でのライブコマースのあるべき姿であったと思います。当時インフルエンサーマーケティングが流行っていたのも、投資家受けの良さから判断を迷わせる要因となっていたかと思います。

ライブ配信がもつ双方向コミュニケーションのインタラクティブ性も、そのほうがよく活かせたのではないでしょうか。